ここ数年、日本国内のBtoB業界では、ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)に注目する企業が急速に増えています。その背景には、現状企業の調達購買に関わる人物は現場担当者ひとりで完結せず、その多くはチーム内、そして社内全体への合意形成が場合によっては必要となるため、企業単位でのマーケティングアプローチが必要となってきていることが大きな要因としてあげられます。
しかしながら、データ取得、組織間の連携協力など含めて、ABMのハードルは想像以上に高く、現時点で日本国内でのABMは未だ発展途上にあり、多くの課題があるとされています。
今回は数あるABMの成功を阻む課題の中でも、日本国内ではあまり言及されていない「ダークファネル」に注目し、アメリカを中心に今注目を集めている最新ABM手法をご紹介致します。
※参考情報【ABMは時代遅れ?今海外で注目されているBGM(Buying Group Marketing)とは】
「ダークファネル」とはリード獲得前のマーケティングファネルを指しており、ユーザー情報がアノニマス(匿名状態)のことを意味しています。
これまで、従来の日本国内のABMの取り組みでは主にリード獲得後のファネル上での最適化が対象となっていました。そのため、リード獲得前のダークファネル上でのABMの施策活動は依然として国内の多くのBtoB企業では着手されていない状態となっています。
「BtoB企業の調達購買プロセスの約7割がオンライン上で完了し、営業担当者がアプローチする前にすでに勝負がついている」という調査データは有名な話ですが、さらに直近の弊社の統計調査の結果から明らかになったのは、同様にWebサイト来訪後の見込み顧客の平均で約68%がエンゲージメント不足によりサイトを回遊せず離脱していることで、莫大な機会損失が発生しているということでした。
現在、多くのBtoB企業の担当者は獲得したリードの「質」の低さに頭を悩ましています。その背景としては、そもそも従来のマーケティング活動ではサイト来訪者がダークファネル(アノニマス)の場合には自社のターゲット顧客なのかさえも把握することができないため、とにかくリード獲得を一定の量を追わなければその後の施策アプローチが行えないため、リードの件数自体をマーケティングのKPIとして追い求めすぎてしまうことが多くの企業で起きています。
サイト来訪者の識別と、来訪者エンゲージメントの可視化が共にできていない状態で「どの企業に、何の情報を、いつ届ける」のかといった基本的なエンゲージメント強化施策ができていない場合、仮にリード獲得できたとしてもその後の商談化するまでの道のりは極めて不透明であることに変わりはありません。
「No Forms.」「No Spam.」「No Cold Calls.」突然ですが、このフレーズはABMの領域で世界的に圧倒的な実績を誇る、弊社TRENDEMONのオフィシャルパートナーでもあるアメリカのサンフランシスコに本社を置く6sense社が提唱しているものです。
「マーケティング・セールスともに難易度がかつてないほど高くなっている今、エンゲージメントの質を考慮しないフォーム経由でのリード獲得、そして、パーソナライズができていない一斉送信メールなどのスパム的アプローチ、ターゲット企業がどのような購買ステージにいるのか把握できていない状態での営業担当者からの”コールドコール”、こうした旧態依然としたマーケティング戦術が世界中のBtoBの購買担当者を遠ざけ、企業の競争力を大きく削ぎ落としている」と著書の中で警鐘しています。
こうした状況の中でTRENDEMONは新たにABM機能を日本国内でも提供を開始致しました。かねてよりTRENDEMONではサイト来訪者のダークファネル(アノニマス)からのジャーニー計測、エンゲージメント可視化から強化までを強みとしていましたが、6sense社との協業によりこれまで実現できなかったABMツール機能を提供することが可能となりました。
従来の類似サービスとの比較では最大で4倍以上の捕捉率を実現することができるようになったことで、今まで可視化することができなかった企業インサイトや実際のターゲットとなる企業の来訪比率などをリード獲得前のダークファネルの初期段階から明らかにすることができるようになりました。
結果として、これまでリード獲得するまで着手することができなかった改善活動のサイクルを先読みして、高速に回すことが可能になります。
Gartner社が発表した上の調査からも、今後さらにBtoB購買担当者にとってオンライン上での購買意思決定は増加してくることが予想されており、今後いかにオンライン上、特に自社サイト上で自分たちが届けたい情報ではなく、ターゲットとなる「”企業担当者”が求めている情報」を適切なタイミングで届けることができているかで勝敗が大きく分かれると考えられます。
そこで、求められるのはエンゲージメントの可視化です。来訪者が何を必要としているのかを把握するには事前に今どのエンゲージメント度合い(購買ステージ)にあるのかをある程度可視化できていないと場当たり的なアプローチになってしまい、エンゲージメントを高めることは極めて困難になります。
TRENDEMONのABM機能では来訪企業のエンゲージメントを可視化するダッシュボードを提供しております。これにより、今どの企業がどれだけの来訪回数を重ね、どのコンテンツを、どのくらい読み込んでいるのかなど、エンゲージメントの深さ、興味関心を可視化できるようになり、実際にあとどのくらいのタイミングでお問い合わせがくるのかもある程度事前に予測できるようになります。
かねてよりTRENDEMONではパーソナライゼーションを提供していましたが、これまでリード獲得するまで来訪者がどの業界に属しているのか把握することが当然できず、適切な事例コンテンツなどをピンポイントでオファーすることが困難でした。
今回のABM機能によって自社ターゲットとなる企業や、特定の業種業界に対して適切なコンテンツをピンポイントでオファーすることが可能になり、従来のオファーレコメンドよりも最大で10倍以上高い反応率を獲得し、これまでにないほどのエンゲージメント強化を行うことができるようになりました。
下図は実際の弊社内で実装しているパーソナライズ事例オファーのイメージ画像です。実際に該当の企業が来訪した際に、それぞれパーソナライズされた事例がオファーされます。
Success has everything to do with how we empower, engage, and care for both our employees and customers. An optimized customer and employee experience― powered by the cloud and AI-driven technologies we now have access to―can thorough transform a business’s success.
(成功というのは、従業員と顧客の両方をいかにエンパワーし、エンゲージし、ケアしていくかにかかっているのです。今や我々がアクセスできるクラウドやAI技術を用いた最適な顧客・従業員体験は、ビジネスの成功に大きく貢献します。)
[*https://6sense.com/no-forms-no-spam-no-cold-calls/ (2022) 本文より一部抜粋]
最後に、上記は6sense社の著書「NO FORM. NO SPAM. NO COLD CALLS.」の中で言及されていた一文ですが、テクノロジーは日々アップデートしていく中で、最も重要なのは単なる顧客獲得といった話ではなく、それらのテクノロジーを用いて「従業員と顧客」がいかに幸せになることができるかを企業は成功するために真剣に考えなければならないと述べられています。
これまで企業のマーケティング・営業活動においてGuesswork(推察を元にしたアクション)は当たり前のように行われていましたが、実はこれらの実際のデータインサイトを無視した企業視点での「コールドコール」「メール配信」「広告」などのアクションは見込み顧客だけでなく、従業員自身も疲弊させてきた側面があることも事実ではないでしょうか?
しかしながら、今回ご紹介した最新ABMテクノロジーのように、少しずつではありますが、現在これまで可視化できなかったような見込み顧客のインサイトデータを可視化することができるようになってきています。
これまでGuesswork(推察を元にしたアクション)をしなければならなかった状況では、現場担当者は「勘」や「属人的な経験則」を通じて、より多くの人にアプローチをするために、多くの業務量を遂行する必要がありました。しかし、今回ご紹介した最新のABMテクノロジーを活用することで実際のデータをもとに「アプローチすべき企業」に対して無駄なく的確に業務を行うことが可能になり、「確固たる自信を伴ったアクション」が実現されつつあります。
そして、我々TRENDEMONとしても「現場担当者(従業員)と顧客」の幸せの両立実現に少しでも貢献できるよう引き続きプロダクトのアップデートを図ってまいります。